ゼラチンの最も古い用途は「 工業用 」 です。食用のゼラチンよりも精製度の低いゼラチンをニカワ(膠)と呼びます。ニカワ(膠)は天然素材の接着剤として、化学接着剤が発明されるまで様々な分野で広く利用されていました。その他にも、写真用フィルムの乳剤、墨、石鹸原料、潤滑油など、私たちの暮らしを支える様々な分野で活躍しています。最近では文化財の修復に欠かせない天然の接着剤として、あらためて注目を集めています。

工業用ゼラチンの代表的な用途

接着剤 楽器用接着剤 食品模型
ビニル系ポリマー 生コンクリート 非鉄金属の電気製錬 人工皮革
塗料 マイクロカプセル サンドペーパー ゼラチンフィルム
雪の断熱材 マッチ ガラス工芸 和紙  ・・・ほか

ゼラチンの性質を持つ天然素材の接着剤ニカワ。

古くから弦楽器の接着に使われているニカワ ( 膠 )。そのニカワの成分も実はゼラチンなのです! ニカワは、楽器の接着や修理などに多用されています。なぜ楽器の接着にニカワが用いられているのか?それは古い楽器が、現在まで修復を繰り返しながら使いつづけられていることからもわかります。ニカワは市販されている接着剤より、多少、接着力が弱いといわれていますが、木面の接着に関しては、木工ボンドよりも強固です。そのうえ、熱を加えたり、湿り気をあたえることで、簡単に剥がすことができるので繰り返し修理することも可能です。またニカワには、温湿度の変化で生じる木材の動きに順応して、音の伝達を良くする働きがあり、楽器にとって、大変理想的な接着剤とされているのです。

ニカワ(膠)は多くの文化財に用いられています。

ニカワ(膠)は太古の昔から建造の接着剤としても用いられてきました。日本画の制作においても、色を固着させる成分として用いられています。長い歴史を持つニカワ(膠)。古く貴重な文化財にも広く用いられています。 最近ではそれらの文化財を当時に近い手法で修復するために、当時に近いニカワ(膠)を復元する取り組みも行われています。先人の技術や文化を後世に残すため、いま再びニカワ(膠)が注目されています。

写真フィルムや印画紙。想い出の側にもゼラチン。

写真のフィルムにゼラチン?と、意外に思われる方も多いと思います。実は、フィルムや印画紙の写真乳剤もゼラチンから作られています。 ゼラチンを溶かし、臭化カリウムの溶液を加え、暗室内で硝酸銀の溶液を加えて攪拌すると、乳白色の液が出来ます。これを、フィルムベースやバライタ紙に塗布して乾燥させると、感光膜になり、写真フィルムや印画紙になります。ゼラチンを基材とする乳剤が作られた19世紀末から現代まで、ゼラチンは写真産業と共に歩み、輝かしい発展を支えてきました。 写真のデジタル化が進行する今日も、新しいニーズに応えるべく、研究・開発が続けられています。